パンズ・ラビリンス

今年秋の最大の期待作「パンズ・ラビリンス」。公開2日目のチケットが案外簡単に取れてしまったので観てきました。

とはいえ、たまたま早い時間に通りかかったので整理券番号をチェックしたら案外小さい番号だっただけで、観客側の期待も大きいのか連休中の上映は全回満席。恵比寿ガーデンシネマのさほど広くないロビ−は大混雑でした。
そもそも日本公開も危ぶまれていただけにこの盛り上がりは嬉しいです。やはりファンタジーブームにアカデミー賞受賞という追い風が効いてるんですかね。

さて、映画の中身は・・大人の鑑賞にも耐えるファンタジー。どうもいわゆるファンタジー映画って、作り手側の「子供向けにはこんなもんでいいだろう」感がぷんぷんしていて嫌なんだよなぁ。ボウイが出ていたやつとか、リマールが主題歌歌っていたやつか、あれとかこれとか(笑
やはりもう21世紀なんだし、近代ファンタジーとしては残酷で不条理でやるせないこの世界の現実を寓意で包んで提示するのが本筋ではないのか。メルヘンじゃないんだから。
という意味でこの映画は正統派の近代ファンタジー。児童向けファンタジーと一線を画しているのが、時代設定とその結果としてのあまりに過酷な現実。

最近ではテリー・ギリアムの「ローズ・イン・タイドランド」。あれもシビアで絶望的な現実と折り合いを付ける少女の話だったが、テイスト的にはそれと近いかも。
こちらの主人公オフェリアの運命はアリスよりさらに哀しい。まさにシビアで絶望的な現実から抜け出し、本来自分が居るべきだった世界へ旅立つ話だから。

とにかくリアルな現実の描写とファンタジーの世界の描写が凄い。たまたま前日にゾンビ映画(プラネット・テラー)を観たので多少グロな映像には慣れていたけど、そうでないと辛いシーンもいくつか。しかし、だからといってそこから目をそらしてはいけない。そのグロなところもこの世界の現実なんだから・・・というメッセージでもあるんですよね。

現実世界は1944年のスペイン。人民戦線は既に崩壊し、その残党達が細々とゲリラ活動を続けていて、それを弾圧するファシスト政権という時代背景はきちんと理解してから観た方が判り易いと思います。人民戦線の崩壊から数年経過していて、ゲリラ側も「絶望的な負け戦」というのは判っている、でもファレイロ医師のように負け戦であっても人間としてやるべきことを放棄すべきじゃないというかすかな希望もあるという状況ですね。なんか21世紀初頭のブッシュ政権の話か? という気もするな。

ファンタジーの方もヨーロッパの神話的世界とか、幼児虐殺者ジル・ド・レェを思い浮かべずにはいられないペイルマンとか、こっち側も負けず劣らず変な世界です。

いずれによせ、ジャンル的にはファンタジーなんですが、時代設定、あっちの世界とこっちの世界の描き分け/意味付けがぴったり決まった今年最高の映画。

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